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2018年に6月15日施行「改正旅館業法」に合わせ、旅館業取得を計画したけど、失敗に終わった話

(この記事は2018年に書いたものを再編集して掲載しています。)

~2018年頃、インバウンド需要を数年の間概観する中で、住宅宿泊事業法、改正旅館業法の流れをチャンスに感じ、旅館開業の計画を進める事にしました。改正旅館業法では、今までにない改正が諸々含まれていて、マンションの一室からでも宿泊業が始められる事になります。

写真はイメージです

長らく丁度良い物件を探している中、不動産会社より当該物件を紹介された為、準備を整えつつ、まずは窓口である荒川区の保健所に相談。
ざっくり話を聞くと大分いい感触だったので、事業計画を進める事にしました。
(共同住宅の1フロアでテナントとして旅館営業OKな物件はほぼありません。大体は費用に見合わない対策を求められます、但しやはり最終的にはその点がネックとなりました。)

【旅館業申請予定だったマンションの概要】
申請者:オーナーでなくテナントとして申請
(所有・賃借不問)
場所:荒川区
階数:5階建
容積:601㎡
部屋:3階全部屋(3部屋)
必要書類:図面、検査済証 
相談窓口:都市計画課と建築指導課
必要な設備:非難口誘導灯、自動火災報知設備(相談窓口:荒川消防署)
ホテル・旅館業許可申請手数料:30,600円
近くに夏頃開園の認可保育園ある、(近隣にある場合説明会が必要、しかし前例より反対された事などはないという。)

まず申請可能なマンションを見つけて借りました。
結果申請できなかったので、損失は初期費用と家賃分。
抜け道はあるかもしれませんが、借りているか所有していない物件の相談は受付けて貰えません。

保健所には合計電話を2、3回、相談で、3、4度ほど出向きました。
保健所で説明を受け、該当の冊子を貰った後、保健所と同時進行で、項目ごとに都市計画課と建築指導課、消防署に相談をします。各課問題ないとお墨付貰った後、保健所で全てを取りまとめる形となります。

まず保健所で図面を手に、どの部屋に何名泊める等のざっくりとした全体計画を相談しました。
次に都市計画課に相談したところ、(最初の相談では)確認済証か検査済証があれば良いとのこと。
最初に図面一式貰っていましたが、所有のオーナーである建設会社に再度問い合わせ、図面一式が送られて来るのですが、やはりそこに確認済証、検査済証はなく、確認したところ残っていないとのこと。

写真はイメージです

確認済証なら公的なものがあるだろうと、区側の台帳を調べて貰いました、しかし有りません。無い。
仕方ないので、一旦確認済証の代わりに建設当時の図面に添えられた記録の一部分である所有者情報のコピーを取らせて貰いました。
私も建築業界に居た為、30年前は確認済証がなくても不思議ではないことは知っていましたが、自己所有物件を持つ建設会社でも取得してないものなんですね。笑

保険所に相談する前、この部屋数で採算が合うか、申請可能かは凡そ調べました。申請面積の合計が100㎡超だと建物の用途変更が必要なため、(当初、用途変更はかなり大変だと聞いていました)途中でギリ採算に合う2部屋に改め、相談し直したり。

しかし話が詰まって行く中、計算すると共有部(通路、階段室)含め結局2部屋でも100㎡超となりました。そしてついでに言うと用途変更については実際そこまで大変(※)で無く、申請だけでよい事も分かりました。

※用途変更が大変な理由は、確認申請を通さず改築などをしている場合が多くあり、その場合わざわざ元の状態に戻し、確認申請をし直してから用途変更する必要がある点、それが大変だという事なんですよね。

でも結局このマンション、当初の図面を見ると、例に漏れずその後、エントランス通路上に屋根(大規模修繕)を設置しており、申請が出されていませんでした。この点からここで断念。

(余談ですが後述です:翌年2019年の改正建築基準法で、用途変更の際に確認申請が必要となる面積は、100m2超から200m2超となりました。笑
これであれば問題なかったんですが、残念ですね。)

写真はイメージです

ここからは、断念した上でのつづき。
用途変更の100㎡を超えないよう、納戸等を板などで打付け塞ぐなど使用不可の状態にする処置は可能ではあるのですが、家賃も容積分払っているし、お金を生む容積分を使用不可にするのは当然費用対効果が悪くなります。

また荒川区ではフロントとして一部屋分が必要な為、2部屋(=100㎡オーバー)は必須でした。
荒川区では特に厳しいですがフロント設置に関しては、必須で無い区も結局「帳場」は必要である為、同じようなことになると思われます。
しかし条件が整えば一部屋でもできる為、3部屋中一番広い2DKの部屋で再度考えては見ました。フロントとして一部屋使えそうではありました。しかしスタッフと客でトイレを分ける必要があり、2つ必要。そこは共同住宅の一室の為、やはりトイレは1つしかありません。またレイアウトもフロントを置く部屋からもう一方の部屋が確認できる構造である必要があり、そういう構造ではありませんでした。その為やはり今回は(2DKの)一部屋だけでの取得は難しい形となりました。

設備について、
非難口誘導灯と自動火災報知設備については荒川消防署に相談。上述通り無理だというのは分かっていましたが、予約もしてしまい念のため。

非難口誘導灯の設置はそこまで大変ではありませんが、問題は当初、保健所で相談したとき「通常5階建ての共同住宅ならある」とのことであった自動火災報知設備&受信機が無かった事。

無いのに遵法に建物が存在している理由は、オーナーの建設会社側で、「堅牢な建物に限り自動火災報知設備を免除される」申請がしてあった事。
「主要構造部を耐火構造とした共同住宅の住戸は一定の条件を満たしていれば、当該住戸はそれぞれ別の建築物とみなして、自動火災報知設備が免除」これに該当(いわゆる特例のようなもの)。

また、改正旅館業法施行3カ月前~直前に相談したということもありますが、全貌はともかく、都市計画課と建築指導課は、改正旅館業法に関してまだ理解が浅く、連携していないようでした。当初都市計画課で確認済証か検査済証片方あれば良いと言っていたのは誤りで、検査済証は必須だった。それも無い場合は既存不適格調書が必要でした。

その質問を繰り返しているときはまだ可能性があったので、HPを調べ、これのことですか?と確認し、1つ1つ質問していきました。

荒川区既存建築物調査報告書

最初既存不適格調書をオーナーに確認すると「いやいや既存不適格などではなく、ちゃんとした建物だ」と言っていました。まあ旅館業法の視点からの話ですから。

一応説得して、既存不適格調書を作ってもらう事にはなりましたが、自社の1級建築士にはこのようなものは初めて作る。と言われたそう。建設会社でも、自社所有物件については?大型の改築なく、やってきた場合もあるのでしょうか。

とにかくやはり、事前にある程度勉強しても、法改正のドタバタで説明がわかりづらい。荒川区に関わらず、元々建築課の説明はわかりづらい。でもそれはそういうもの、、法規を完全に理解でもしてる人ならまだしもですが。笑

どの観点からの説明か前置きがなかったり、あっちこっちに行く説明、まだ改正内容を現場レベルで全て把握している人は恐らく居ない様子でした。まあ仕方ないですよね。
相手は役所、こちらは事業。やはりそこも踏まえこちらの方が知識を持って挑まなければいけませんね。

ちなみに既存建築物調査報告書では現法律に対し、遵法状態を調べるもので、大がかりなコア抜き(コンクリートを抜き取る、破壊)をしなくてはなりません。助けとなるはずの耐震強度計算書なども残っていませんでしたし。本当にゼロから建物の状態を調べなければならない状態でした。無理だ。。
オーナーが建築会社社長夫妻…とは言え、まあこんなもんか。

オーナー側に作成すると言って頂きましたが、時間もかかる為、諸々の条件を鑑みて断念する事としました。

今回の断念ポイント、確認する点
◆ 申請面積が100㎡超(2019年に200㎡に改正)の場合
小規模の改築は確認申請なしでやっているところが多い為、改築時、確認申請を都度して来たか現物と図面で確認。現在の建物の正確な状態を確認申請してあることを把握する。

◆ 特例などで必要な設備の免除申請がされていないか。必要な設備に関しての特例を把握。

◆ 古い建物だと検査済証がないことが多い。
→ (特に荒川区の場合)検査済証があることを確認する。
自治体により、(以前は)100㎡越の場合必要だが、それ以下の場合不要であったり、どちらにしろ必要であったり、
また検査済証が不要である自治体もあるようで、まちまちである。

残念ではありました。でもまた他の形で店舗の実現が叶う事を願って。